【語源100話(32)】xylitol(キシリトール?ザイラトール?どっちで読むか)
xylitol(キシリトール)の発音が話題を呼んでいるようだ。日本語ではキシリトールで定着しているが、実際の発音は「ザイラトール」に近い。これをきっかけに発音だけでなく、語源にも注目してほしい。
そもそもキシリトールはキシロース(xylose)という糖から作られる人工甘味料。キシロースは別名、木糖と言われることから分かるように、xyl-という接頭辞が「木」、-oseは「糖」を表す。もともと、a birch bark(カバノキの樹皮)から抽出されたことに由来する。
xyl-(木の)に音を表すphoneを付ければ、木琴の仲間であるxylophone(シロフォン、ザイロフォン)となる。
日本人が英語を苦手な理由の一つに発音の難しさが挙げられるが、日常化したカタカナ語の発音がそれを助長しているという意見は少なくない。日常からxylitolをザイラトールと正しく発音するだけで自然と正しい発音が身につくはずなのに、わざわざ日本語の発音として読んでしまっているから、本当の発音を覚えないし、二度手間になってしまうという説である。個人的に、さもありなんと思っている。
一方、商品名として考えたときに、濁音が混ざる「ザイラトール」より、濁音のない「キシリトール」のほうが何となく清潔感があり、選ばれやすいのかもしれない。日本語の文化というか、日本語の響きのような感性的なものがこのカタカナ語の発音問題に潜んでいるような気もして、なかなか奥深い問題である。