【語源100話(52)】Whistle-Blower(ファールの笛を吹く人)

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以前、ネットニュースのアプリから次のような速報が流れてきた。

Whistle-Blower Tells Senators That Facebook Puts ‘Astronomical Profits Before People’

「フェイスブックは顧客よりも”天文学的な利益”を優先していると上院議員に内部告発」

whistle-blowerは直訳で「笛を吹く人」。不正をみんなに知らせる内部告発者という意味となる。もともとは文字通り、one who blows a whistle(笛を吹く人)を意味していたが、19世紀からスポーツの審判をそう呼ぶようになり、whistel(笛)は「ファール(不正)があった時に鳴らされるもの」というイメージが生まれていった。

blow a whistle(内部告発する)と動詞にしたり、whistle-blowing, whistleblowing(内部通報、公益通報)と名詞にしたりもできる。内部告発や公益通報は今世紀さらにホットになる話題なので、面接や作文でも使い勝手がいいだろう。パワーハラスメント(パワハラ)やアカデミックハラスメント(アカハラ)、セクシュアルハラスメント(セクハラ)といった各種ハラスメント(harassment)やブラック企業、ブラック工場(a sweatshop, a sweat factory)のいずれも、勇気をもって最初に外部にSOSを知らせるa brave whistle-blowerがいてくれるおかげで明るみになる。

ものすごく簡単な単語だけを使ったとしても、 Whistle-blowing is very important. So companies should more effort to protect whistleblowers.(内部告発はとても大切です。なので会社はもっと内部告発者の保護に努力すべきです)と言えば、それらしく聞こえる。こう言えば面接官は必ず「Why is it so important?」と理由を聞いてくるはずで、事前に理由をしっかり用意しておけばこちらのペースに持ち込める。

ハラスメントをやる側、企業側も、”対抗手段”としてこんなことわざを用意している。「Snitches get stitches.(密告者は痛い目に遭う)」「 snitches get stitches and end up in ditches.(密告者は痛い目に遭って、最後は溝に落ちる)」。snitch(密告する)とstitch(けがをして針で縫う)をかけた言葉。「人を呪わば穴二つ」的な表現だが、これを正当なwhistle-blowingに使うのは違和感がある。

冒頭の見出しにあるもう一つの重要表現として、「put A before B」がある。「Bの前にAを置く」つまり「BよりAを優先する」という意味。「優先する」は、prioritize(プライリタイズ)が真っ先に思い浮かぶ。こちらも覚えておきたい。覚えておくとパラフレーズ(言い換え)に便利だ。prioritizeの場合は、overを使って「prioritize A over B」で「AよりBを優先する」となる。ユーザーファーストとかアスリートファーストは「customer comes first.」(顧客が最優先)などの「come first(~が最優先される)」が由来だろう。ユーザーファーストは和製英語である。

ちなみに、不正はinjustice, dishonesty, wrongdoingあたりが使いやすい。whistleblowerのような単語と一緒に覚えておくと定着しやすい。whistle-blowerは犯罪に使われることがほとんどで、この記事の場合もフェイスブックが利益を優先していることを犯罪的な行為であると憤っているというニュアンスがこめられている。もし”不正”が倫理的なものだとすれば、dishonesty(不誠実)という表現のほうがいいかもしれない。

astronomical profits(天文学的な利益)という表現も面白い。GAFAMによる寡占化や、貧富の差が拡大したことで膨らむ富裕層の利益などについて言及するときに、このastronomical profitsはユーモアやウィットに富む表現になる。

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