【英語表現】トリチウム含む水の海洋放出案をとりまとめ
Ocean viewed as the best place to dump water from Fukushima plant
Asahi Shimbun より。大事なニュースだが、今のところ海外メディアにはあまり知られていないようなので、朝日新聞の英語版を引用する。
見出しの view as は「〜とみなす」という意味。新聞の見出しはbe動詞などを略すので、この場合はOcean has been viewed as が省略された形。「海洋が最適地だとみなされている」という意味だ。何の最適地かというと、to dump water from Fukushima plant。「福島第1原発の汚染水を捨てるのに」ということ。
A government panel wound up three years of discussions Jan. 31 by effectively suggesting that releasing more than 1 million tons of water contaminated with radioactive substances at the Fukushima No. 1 nuclear power plant represented the most feasible option.
福島第1原発では今、放射性物質を含む100万トンもの水の行き場がないのが深刻な問題で、大量のタンクで保管している。いわゆる「汚染水」(この言い方を嫌う人もいる)だが、これは敷地内に流れ込んでくる地下水に由来する。きょう引用したのは政府の委員会がそれを海に流してしまうのが現実的だという意見をとりまとめたという記事だ。こうした時事問題の知識は英語学習には重要で、non Japaneseとの会話に出てきたとき、more than 1 million tons of water などと数字を言えると説得力が出る。普段日本人と話すときすらあまりこうした話はしないと思うが、non Japaneseはやはり原発事故が今どうなっているか興味があることが多い。最低限の数字や言い方を覚えておくといいだろう。
参考に、福島第1原発で保管している汚染水は現在、1.2 million tonsで、保管容量(tank capacity)は最大でも1.37 million tonsの計画しかない。このままでは2022年の夏にこの最大容量に達するとみられている(That capacity is expected to be reached in summer 2020)。だから今、汚染水の処理問題が深刻化しているのだ。
a government panel は政府の審議会、諮問機関などを指す。政府そのものではなく、有識者会合の意味合いなので、覚えておくと便利だろう。wound up はwind upの過去形。windはウィンドではなく、ワインドと読む。日本語にもなっていると思うが、「巻く」という意味だ。wind upで「巻き上げる」となり、長く続けてきた会合を終える、結論を出す、みたいな意味になる。つまりwound up three years of discussionsは「3年間にわたる議論を終えた」ということ。
どういう結論だったかはthat以下にある。いろいろ文の修飾をとって骨格だけにすると、releasing 1 million tons of water represented the most feasible option(1万トンの水を放つことは最も現実的な選択肢に相当する)となる。”the most feasible option”はrepresentと関連付けて覚えておくと便利そう。最終決定(a final decision)は政府に委ねられる(will be left to the government)。住民の同意が得られるかなど、今後も目を離せないニュースだ。そもそもこのgovernment panel自体、”conceded there was a possibility the release of processed water could lead to further negative publicity.”「処理した水の海洋放出は、(地元、特に地元のfisheryにとって)今以上の悪評(further negative publicity)を与える可能性があることを(しぶしぶ)認めた」という。concedeは「しぶしぶ認める、与える」。
ちなみにトリチウム(tritium)は強引にカタカタで書くと「チュリティアム」という感じ。Tritium is a radioactive isotope of hydrogen。トリチウムを含んだ水は、water containing tritium。新聞などを読んでいると、有識者の枕詞で「〜に詳しい」と出てくるが、「トリチウムの問題に詳しい人」は、a person well-versed in issues involving tritium。
<MEMO>disposal of the water(汚染水の処理), release diluted water in the ocean(希釈した水を海洋に放出する), a better option(よりよい選択肢), discharge into the atmosphere(大気中に放出する), with the proviso that concentration levels are controlled(濃縮度がコントロールされているという条件で), dilute tritium levels(トリチウムの濃度を薄める), processed water(処理水), evaporate the water into the atmosphere(汚染水を大気中に蒸発させる), vaporized water into the atmosphere(大気中に水を蒸発させる)