【語源100話(81)】しつこいくらいに調べ続けて完成する「treatise(トリーティス)」とは

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「treatise(トゥーティス、論文)」という単語は、個人的な感覚だが、なんだか覚えにくい。論文といえばpaperやthesis、essayという単語が浮かぶし、逆にpaper、thesis、essayという単語を見れば論文という日本語が浮かぶ。ただ、このtreatiseだけは違った(あくまで個人的な因縁…)。treatiseと論文がなかなか結び付かず、何度も辞書を引く羽目になったのを覚えている。こんなときも語源から入れば記憶は定着しやすい。

treatiseの語源は14世紀初頭にさかのぼる。この単語は、Anglo-French(アングロ=フレンチ語)の「tretiz」(13世紀中頃)から派生し、これはOld French(古フランス語)の「traitis」(論文、記述)に由来する。この「traitis」は、「traitier」という動詞からきており、「取り扱う」や「話や書き言葉で表現する」という意味を持つ。

では「traitier」という単語をさかのぼろう。traitierは12世紀の古フランス語で、ラテン語の「tractare」に起源を持つ。「tractare」は「管理する、取り扱う、行動する」といった意味を持ち、もともとは「引きずる、強く引っ張る」という意味の動詞「trahere」(その過去分詞は「tractus」)の頻出形だった。この「trahere」は、英語の「tract」(範囲、区域)の語源ともなっている。

この語源的な背景を踏まえると、「treatise」は本来、何かを取り扱ったり、話や文章で何かを表現したりする行為を意味する言葉であった。これが時代を経るうちに、特に「論文」という意味で用いられるようになった。

また、この語源からは、論文(treatise)が情報やアイデアを深く掘り下げ、詳細に論じるための形式であることが理解される。つまり、何かをしつこく「引きずる」ように詳細に扱い、深く分析するという原初の意味が、現代の「treatise」の意味合いにも反映されているのである。

ちなみに、論文を意味する英単語としては、ほかにarticleとdissertationがある。articleは覚えやすいとして、dissertationは覚えにくい。これは長くて硬めの学術論文を意味し、doctoral dissertationで博士論文となる。dissertaionの語源はdiscourse(論文、講演)と同じ。dis(離れて)cur(走り回る)、つまり滔々と語り続ける、みたいな意味で、discuss(議論する)、discussion(議論)も同じ仲間だ。dissertationという英単語を見てdicussionを思い出せるようになるといいかもしれない。

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