プロフェッショナルとアマチュアの決定的な違い

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その昔、菊川市体育協会主催のスポーツシンポジウムを聞きに行った。ちょうど常葉菊川高が春の選抜高校野球で全国制覇したときである。

そして、常葉菊川高の佐野心部長の発言が非常によかった。佐野さんが基本に忠実であることは知る人は知っていたことだが、あらためて本人の口から聞くと説得力があった。
さすが元プロ野球選手(中日)。シビアさが伝わってきた。
長いけど、以下抜粋(話し言葉をちょっとだけ読みやすく編集した)。

(前略)

かなりの運を使い果たしてプロ野球に入団できたんです。
自分なりに自信満々でした。

(中略)

室内練習場で打撃練習をしていると、落合選手(現・中日ドラゴンズ監督)がつかつかと歩いて来て、

「佐野、バッティングの基本は何だ」

「センター前です」

「じゃ、センター前打ってみろ」と言われたんです。

バッティングマシーンのボールは同じところに来るように設定してあります。
そのボールを気持ちよく打っていた私は「センター前くらい打てますよ」と。

でも、「10球打ってみろ」と言われたら、30球くらいかかったんです。
「お前、それでもプロ野球選手か」とものすごくバカにされました。
「プロ野球選手ならバッティングの基本くらいできて当たり前だ」

小学校から野球をやってきて、その時に初めて”基本”というのができていなかったことを痛感しました。

キャンプの途中で投球練習場に行った時、今中(慎二)だとか山本昌さんが投げていたんですが、星野監督がピッチャーの後ろで「おい昌、ど真ん中100球。今中もだ」。

「ど真ん中100球?」。びっくりしたんです。
プロ野球の選手がど真ん中のボールを100球投げる?は?なんだこれ?

高校野球でも中学野球でもアウトコース低め、アウトコース低めをみんな投げている。
それがプロ野球に行ったらど真ん中を100球。

今中や山本昌は本当にミットが動かないくらいのど真ん中を投げます。
だけど、若手のピッチャーも同じことをやると、ちょっと逸れたり、アウトコースに行ったり、インコースに行ったりする。

でもストライクなんですが、星野さんは「お前、明日からファーム行け。ど真ん中も放れないピッチャーなんかプロじゃない」。その一言で本当にファーム行っちゃうんです。

それくらい基本というのをプロ野球選手は大事にするんだということを私は痛感して、たった一本だけ打ってクビになりました(佐野さんは俊足を生かして活躍したが、最終的なプロでの生涯安打は1安打だった)。

その経験を生かす手はないと思って、常葉菊川で野球をやる時に「いいか。まず大事なのはセンター前や」。
そして田中健二朗と戸狩には「いいかお前。ど真ん中放ってみ」。その気になるよう言うてるわけです。

実際、8月に新チームになってから田中、戸狩には今日までずっとど真ん中のボールしか投げさせていません。

それが選抜の大阪桐蔭の世紀の中田との対戦。
みなさんの心の中にも思い出に残っているような、インコースへのものすごい厳しいボール。あのボールは一切練習していないんです。だけど、基本ができていれば試合中は応用ができるんですね。

      ◇

なるほど。何回聞いてもいい話だ(録音してあるのだ)。
で、サラリーマンの基本というのは何か考えてみた。
サラリーマンにとって、ど真ん中を100球放るほどの基本って何だろうかと。それができて初めてプロのサラリーマンになれるわけで。

職種によって違ってくるだろうけど、まあ例えば自分たちの仕事で言うと、100回連続で〆切(納期)を厳守するとか、100日連続で取引先に顔を出す、もしくは電話をかけるとか、そういう基本中の基本なんだろうと思う。その基本が全くできていないことを痛感させられた。

とにかく100日とか、100人とか、普通の人だと途中でどうでもよくなっちゃったりする仕事を、一定の質で安定してやり抜くのがプロなのだと感じる。さらに言えば、100球をど真ん中に入れることは素人でも時間をかければ可能かもしれないが、プロは100球のど真ん中を100球近い最小限の投球でなし得るからこそプロなのだろう。

徹底して何かをやり抜く、しかもできる限り早く、というチャレンジか。
悪くなさそうだ。今日からでも挑戦できそうかな。

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