【語源100話(86)】produce(生産する)の名詞形にはproduce(農産物)とproduction(生産物)の2通りが存在することの語源的背景

Pocket

「produce」(プロデュース)という単語は、「生産する」「作り出す」という意味で日常的に使われるが、その語源を紐解くと、さらに興味深い背景が見えてくる。語源はラテン語の「producere(前に引き出す)」に遡り、pro-(前へ)とducere(導く、引く)が組み合わさり「何かを前に引き出す」という意味が元になっている。これはまさに、目に見える形で何かを外に引き出し、世に送り出すというイメージに直結している。デュース(ducere)の部分はintoduce(イントロデュース=内側に引き込む=導入する)、conduct(コンダクト=一緒に引き込む=案内する、実施する、経営する)などにも見られる。空調などのダクト(duct)も仲間だ。

「produce」は動詞として「生産する」という広範な意味を持つが、名詞はproduceとproductionの二つあり、ニュアンスが異なる。produceは「農産物」を意味する。これは、自然から直接引き出されたもの、つまり人間の手による加工を受けていない純粋な生産物を指す。畑で育った果物や野菜が「produce」として扱われる。一方で、「production」という単語も同じ「producere」に語源を持ちながら、やや異なる意味合いを帯びる。こちらは人工的に作り出されたもの、またはその過程を表す言葉である。工業製品の生産を意味する「production line(生産ライン)」や、大量に製品を作る「mass production(大量生産)」のように、計画的に効率を追求しながら作り出すものを示している。ここでは、人間の手が介在することで形作られる製品や成果物に焦点が当てられる。

こうした背景を理解すると、produceproductionが象徴するものの違いが際立つ。produceは自然から得られた生産物、つまり地球の恵みそのものを指し、productionは人間が人工的に作り出したものを意味している。畑で太陽を浴びて育ったトマトが「produce」であり、そのトマトをソースに加工して瓶詰めにし、世界中に出荷する過程が「production」である。どちらも人間の生活に不可欠なものだが、それぞれ異なる役割を果たしている。原則、どちらも不可算名詞として使われることが多い。

なぜ両者の違いが出たのか分からないが、一般的に、-ceで終わる名詞は、patience(忍耐)、justice(正義)のように抽象的な概念や性質を表し、action(行動)、creation(創造)など-tionで終わる名詞は動作の結果としての具体的なこと・ものを表すような印象がある。つまり自然の産物である農産物はしかるべくして得られる概念的な存在としてのproduceであり、その他の生産物は人為的な生産活動の結果としての成果物であるからproductionなのかもしれない。

TOEIC頻出なので、produceとproductionの違いは覚えておきたいところである。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です