親ガチャを英語で
こんにちは。国内学習組のAlexです。
「親ガチャ」という言葉が話題になっている。今日は親ガチャを表現したいときの話。
ガチャは英語でいろいろ言い方があるようだが、タカラトミーは、Japanese capsule toy ‘Gacha’としている。
a capsule toy machineとかa toy-dispensing macineと言っておいて、’Gacha Gacha’とか’Gashapon’と付け加えればだいたい通じるだろう。
「親ガチャ」は今のところこれと言った英語訳がないようだが、趣旨でいうと、2つの英語の言葉がある。
一つは、born with a silver spoon in one’s mouth(銀のスプーンを口にくわえて生まれた)。銀のスプーンは上流家庭で代々相続される高級品の象徴である。18世紀のヨーロッパでは、外で食事をするときも自宅から食器を持ち込んでいたそうで、その食器の素材を見れば、どの階級に属する人々なのかがすぐに分かったという。
He was born with a silver spoon in his mouth, but unfortunately I was not. (彼は生まれつき金持ちだが、残念ながら自分は違う=彼は親ガチャで当たりを引いたが、残念ながら自分は違う)と言える。
もう一つは、born on third base(三塁で生まれた)。これは生まれの不平等を野球に例えた表現。三塁ランナーはもう一本だけヒットがでればホームインできる位置にいる。親に恵まれた人々は、いきなりこの三塁から人生のゲームを始めることができるというわけである。しかも、この表現には「この三塁ランナーは自力で三塁打を打ったと思っている」という嘲笑も込められているという。
これもシルバースプーンと同じように、He was born on third base, but I was not. (彼は三塁に生まれたが、自分は違う=彼は親ガチャで当たりを引いたが、自分は違う)と言えば、親ガチャの趣旨を表現できる。
下記は2020年2月18日オンエアのCNN Right Nowの引用。米国の歴代民主党大統領の経済ブレインを務めるジーン・スパーリングのセリフにborn on third baseが出てきた。
GENE SPERLING, FORMER ECONOMIC ADVISER TO PRESIDENT BARACK OBAMA: You might remember that Ann Richards was famous for saying that George Bush Sr was born on third base and thought he hit a triple. I think with Donald Trump, it’s was more like he was the pinch-runner for the guy who hit the triple. And when he scores on a wild pitch, he wants to insist he hit the homerun.。
「『ジョージ・ブッシュ(シニア)は三塁に生まれていながら、自分では三塁打を放ったと思っている』と言ってアン・リチャーズが有名になったことを覚えているかもしれない。私はドナルド・トランプこそ、三塁打を打った男のピンチランナーとして三塁に生まれた男だと思っている。しかも、暴投でホームインしても、自分がホームランを打ったと言い張りたい男なのだ」
アン・リチャーズはテキサス州知事を務めた民主党の女性政治家。ブッシュ親子の不倶戴天の敵で、歯切れのよい批判がめちゃくちゃカッコいい人である。とりわけ有名な1988年の民主党全国大会のスピーチは秀逸であり、一見の価値がある。(https://www.youtube.com/watch?v=p-tyKWNwtMU)
このスピーチの最後に、アン・リチャーズは”Poor, George. He can’t help it.”(かわいそうなジョージ。でも仕方ないわ)と言った後、聴衆が静かになるのを待ち、”He was born with a silver foot in his mouth!”(銀の足を咥えて生まれたんだもの!)と締めくくって、万雷の拍手を浴びる。
これは一つ目のborn with a silver spoon in one’s mouthという表現と、put one’s foot in one’s mouth(失言をする)という表現を混ぜ合わせたユーモア。つまりジョージ・ブッシュ(シニア)のことを、生まれつきのボンボンであり、なおかつ生まれつきの失言家であると揶揄したのである。
アン・リチャーズは、ジョージ・ブッシュに代表される不平等な「親ガチャ」(とその恵まれた環境を弱者に還元しないボンボンぶり)の批判に執念を燃やした政治家だったと言ってもいいだろう。