【語源100話(31)】「中抜き」を英語で
東京五輪・パラリンピックの組織委員会やIOC(国際オリンピック委員会)にまつわる報道に最近よく出ていた「中抜き」。英語の辞書で引くと、disintermediationと出てくる。意味は中抜きのほか、「仲介者の排除」とある。インターネットの普及で、業者の仲介(intermediation)を通さずに当事者同士で取り引きできるようになったが、そうした仲介者の排除のことを本来の中抜き(disintermediation)という。
語源にふれておくと、まず、dis(排除)+intermediation(仲介)で、さらにinter(間)+mediation(中間、二つに分ける)となる。med-はmiddle(真ん中)やmedian(中央値、メジアン)にも見られるから、真ん中というイメージがしやすい。
一方、東京オリパラ関係でよく言われた「中抜き」は本来の意味とは全く逆の「ピンハネ」の意味になるので、disintermediationと言ってしまうと、正しく伝わらない。この場合の中抜きは、間に入った人間が利益をピンハネして、リベートやキックバックを得ることなので、a kickbackと言えばよい。「中抜きをする」はget a kickbackとなる。kick backはもともと機械の反動のことだったが、次第にスラングで違法なリベートを指すようになった。
そもそも中抜きをしようと思うと、ピンハネ分を上乗せした法外な金額をふっかけることになるので、rip off(ふっかける、だまして大金を要求ふる)も使える。米ワシントンポスト紙のコラムニスト、サリー・ジェンキンスが2021年5月5日の記事で、IOCのトーマス・バッハ会長のことをVon Ripper-off(ぼったくり男爵)と呼んだのは記憶に新しい。rip offにはもともと、無理に剥がしとるという意味があり、それがぼったくるという意味につながったようである。
サリー・ジェンキンスのコラムはこちら。
https://www.washingtonpost.com/sports/2021/05/05/japan-ioc-olympic-contract/