【語源100話(80)】提唱された糖尿病の新たな呼称「diabates(ダイアベティス)」の語源とは

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日本糖尿病協会などが2023年9月22日、糖尿病の新たな呼称を「ダイアベティス」とすると発表した。英語名のdiabetesをそのままカタカナにしたようだが、普及するかどうか。糖尿病という今の名前よりはイメージはよくなるかもしれないが、ダイアベティスという言葉は正直難しい印象がある。

ダイアベティス(diabetes)の語源について考えてみよう。diabetesは古代ギリシアで「尿の過剰な排出」という意味だ。細かくみると、dia(ダイア)とbetes(ベティス)に分けられる。dia(ダイア)はthrough(渡る、過ぎる)、betes(ベティス)は(行く、進む、歩く)というのが原義。つまり、「(尿が)通り過ぎていく」という病名になる。

日本語の糖尿病という呼称では、尿が糖のような甘い匂いがするとか、糖=美味しいものをたくさん食べた人がなる病気などというイメージに繋がっている。特に後者は誤解であり、誤ったイメージに苦しんでいる人は多い。その意味で「ダイアベティス」には糖や尿という意味は直接は入っていないので、今回の呼称変更に対する思いが理解できる。

dia(ダイア)が付く他の英単語で有名なのは、diameter(ダイメター、直径)。これは「通して測る」という意味で、円の辺を端から端まで渡して測る=直径、の意味が出てくる。また、diaにはdi(2の)も関連づけられている。「2点間を渡す」ということだろう。

diagnosis(ダイアグノーシス、診断)もこのdia(ダイア)が入っている。gnosis(グノーシス)の部分はknow(知る)という意味。つまり、「通して知る」=「検査を尽くして(病気について)知る」ことが「診断」ということになる。diaper(ディアパー、おむつ)もこのdia(ダイア)が入っている。語源は「徹底的に白い」。もともとのおむつの生地の歴史を反映しているようだ。

意外なところでは、悪魔や中傷を意味するdiabolos(ディボロス) 。英語ではdevilだが、ギリシア語のdiabolosにもdia(ダイア)が入っている。bolosは「投げる」という意味で、dia+bolosで「投げて貫通させる」となる。つまり、そのくらい強烈な中傷を投げかけてくるということだろう。

betes(ベティス)のほうも見てみよう。betesですぐに思いつくのは、acrobatic(アクロティック)である。acro(アクロ)は「鋭い」という意味だから、acro+baticは、「鋭く動く」=「曲芸的な」となる。もう一つ面白いのは、convenient(コンニエント)だ。コンビニエンスストアで有名な単語。con+venientと分けられる。このvenientはbatesと同源で、進むとか来るという意味であり、「一緒に来る」=「都合よく一緒に来てくれる」、つまり便利、コンビニエントという意味になる。

「ダイアベティス」と聞くと難しいイメージだが、「なるほど、直径(ダイメタ―)のダイアとアクロティックのベティスね」と考えれば、興味のなさそうな人にも関心を持ってもらえるかも?

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