【語源100話(71)】部族の王が貢物の棚に目を向けるイメージで考えるattribute A to B問題

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attribute(アトリビュート)は日本人にとって覚えにくい、使いにくい単語の一つだろう。なぜ覚えにくいのか、使いにくいのかを整理し、もっと使いやすくなるよう単語のイメージについて考えてみる。

語源はad(~に)+tribute(贈り物、貢物、貢献)で、語義イメージは「~に貢物を与える」である。古代のtribe(部族)がお互いに使者を送り、貢物を献上し合っていたことに由来する。さらにtribeの語源はローマ帝国のラテン人、サビ人、エトルリア人の3部族に由来するという説が支配的。tri-(3つの)+be(存在)という意味だ。

「attribute A to B」には「AをBのせいにする」「Aの原因をBと考える」という意味が出てくるのだが、今一つ腹落ちしない人が多いのではないだろうか。語源のイメージを大切にし、「部族間で貢物をやりとりしているシーン」を想像することが、この理解を少しだけ助けることにつながる。

attributeを単純に「~のせいにする」という意味の動詞だと覚えていると、例えば「地球温暖化の原因は人間活動である」と言いたいときに、日本人のイメージでは「attribute 人間活動 to 地球温暖化」のほうが感覚に近い。「人間活動を地球温暖化の原因として差し出す」というイメージがあるからである。

ところが、実際は真逆で、英語では「attribute 地球温暖化 to 人間活動」という。”attributes global warming to human activity”(地球温暖化は人間活動のせいで起きると考える)は115件出てきたが、human activityとglobal warmingを入れ替えた”attributes human activity to global warming”(人間活動は地球温暖化のせいで起きると考える)は0件だった。

日本人の感覚で、attribute Aに「Aを原因として差し出す」というイメージを持っていると、「attribute 地球温暖化 to 人間活動」は「地球温暖化を人間活動の原因として差し出す」というイメージになり、「attribute A to B」を翻訳したり、使用しようとした際に「?」となってしまうのである。

つまり、「attribute A」に遭遇したときのイメージとして「部族の君主が目の前にいる使者(A)に何を与えようか考えているシーン」を思い浮かべるといい。さらに、目の前にひざまずく部族の使者に対して、何を土産に持たせようか棚に目を向けて思案している、その視線の先にあるものがBである→だからto Bとなる。そう考えるとattribute A to Bのイメージが生き生きとし、しかもしっくり来るのではないだろうか。

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