【語源100話(97)】posse=仲間以上の絆 西部劇からヒップホップまで貫く言葉の力

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「posse」(スィ)という単語は、現代英語ではあまり日常的に聞き慣れないかもしれないが、アメリカ文化、とくに西部劇やヒップホップの世界では根強い存在感を持っている。語源、語感、現代的用法のすべてにおいて味わい深く、覚えておいて損はない単語である。

実はposseは私の好きなTEDの動画に出てきて、ずっと気になっていた単語である。ジャスティン・ビーバーがスピード違反で捕まった話題を元に手作りゲームを作った学生がこう言う。

But he is changing so we’re a part of his posse.

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最初に見たとき、正直何のことか分からなかったが、posseの語源を調べてみると腑に落ちた。彼らはジャスティン・ビーバーを仲間として支え続けると言っているのだった。

語源はラテン語の「posse comitatus(郡の力)」にさかのぼる。ラテン語の「posse」は「力がある、可能である」という意味を持ち、英語の「possible(可能な)」や「power(力)」にも通じる。中世イングランドでは「posse comitatus」という法制度があり、保安官(sheriff)が法の執行のために市民からなる即席の武装集団を招集する権利を持っていた。ここでのposseは、そのまま「市民の協力隊」や「武装した追跡隊」という意味で使われるようになった。

この法的・歴史的背景が、アメリカの開拓時代に輸入される。西部劇でよく見られる、馬に乗った男たちが保安官の掛け声とともに集まるシーンで登場するのが「a posse」だ。posseはもともと法を守るための自警団、つまり「武装市民団」という硬派なイメージを持っていた。

ところが、20世紀後半に入ると、posseはまったく別の文脈でも用いられるようになる。とりわけ1980年代以降、ヒップホップ文化の台頭とともに、仲間やクルーの意味でposseが使われ始める。著名なラッパーたちが、自分の信頼する仲間たち、音楽の制作や活動を共にするチームをmy posseと呼ぶようになったのである。この時点で、「武装した法の執行者」から「ストリートで共に動く信頼の仲間」へと大きな意味変化を遂げているのが面白い。

posseという単語をネイティブが聞いたときの語感には、いくつかのレイヤーがある。まず古風な響きがある。映画や文学で聞いた「the sheriff’s posse」という響きには、土ぼこりを巻き上げて馬を駆る男たちのイメージがある。一方で、都市部出身の若者たちには、「posse」は「頼りになる仲間たち」「バックアップしてくれる連中」という、より現代的で親密なニュアンスを伴う。やや砕けた表現であり、フォーマルな文脈ではあまり登場しない。

類似表現としては、「crew」「gang」「clique」「squad」などが挙げられる。それぞれにニュアンスの違いがある。「crew」はプロフェッショナルな仲間、たとえば映画制作やダンスチームなどに使われやすい。「gang」はややネガティブな響きがあり、犯罪集団のイメージが強い。「clique」は排他的な小集団、「squad」はスポーツチームや軍隊的な結束を想起させる。これらと比べて、「posse」は少し古風でありながら、親密さと忠誠心を感じさせる絶妙なポジションにある。

語源のラテン語「posse=力がある、できる」に立ち返ると、「posse」という言葉の根底には、「力を合わせる者たち」というイメージが流れている。仲間というのは、ただ一緒にいるだけでなく、「共に何かを成し遂げられる力」を持つ者たちということである。だからこそ、「my posse」という表現には、単なる友達以上の、連帯感と信頼が込められているのだ。

先の学生の言葉、最初に聞いたときは私の世代的にはジャスティン・ビーバーの「親衛隊みたいなもの?」と思ってしまったが、あくまでposseは横並びの仲間同士のイメージがあることが分かり、縦型社会ではない現代の若者たちのフラット思考に少し近づけた気がしたのであった。

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