【語源100話(90)】鍵のかかった会議室?―“コンクラーベ”という神秘の英単語
話題の「コンクラーベ」について調べてみた。後述するが、英語ではconclave(コンクレイヴ、カンクレイヴ)という発音になる。原則可算名詞だが、in conclave(秘密裏に)というイディオムの場合は冠詞が付かないのを覚えておこう。
まず、「コンクラーベ」という響き、なんだか重厚で神聖な感じがする言葉だが、ご存知の通りこれはカトリック教会のローマ教皇を選出するための秘密会議を指す。バチカンで煙が上がるあの象徴的な場面を思い出す方も多いだろう。
この「コンクラーベ」に対応する英語は冒頭に書いたように “conclave” という単語である。学校ではなかなか習わない単語なので、まずはこれを分解して理解するところから始めよう。「conclave」はラテン語の con(ともに)と clavis(鍵)を語源に持っていて、「鍵をかけてともに集まる場所」という意味から発展して「密室会議」「秘密会議」という意味になった。
意味を英訳すると、「a private or secret meeting」つまり、「非公開の会合」「秘密会議」となる。日本語でも「密室政治」なんて言い方があるが、あれに近いニュアンスだ。
もっと簡単な英語、つまり上位語として使えるのは “meeting”(会議)や “gathering”(集まり)である。「conclave」はその中でも特に閉ざされた、ある種の神秘性や重要性を帯びた会議に限定される。
コロケーションとしてよく使われるのは以下のような文である。
• The cardinals entered the conclave to elect the new pope.
(枢機卿たちは新しいローマ教皇を選ぶためにコンクラーベに入った。)
• The board held a conclave to discuss the merger in private.
(取締役会は合併について非公開で話し合うための秘密会議を開いた。)
conclaveを含む表現として「papal conclave」(教皇選挙)という言葉が有名で、まさにこれがニュースになっているコンクラーベだ。
類語としては、conference(会議)、summit(首脳会談)、session(会合)などがある。ただし、これらはより開かれた、もしくは形式的な場面に使われることが多い。conclaveは「密閉」「秘密」そして「選ばれた者だけ」というニュアンスがあるので、ビジネスや宗教、政治など、重要な意思決定の場に向いている。
英検の面接などで、例えとしてconclaveを使い、My boss always holds a conclave.(私の上司は重要な会議でも秘密裏に行うのが好きだ)と批判めいたニュアンスをウィットとともに表現すれば、面接官にインパクトを与えられるだろう。
TOEICや英検で直接「conclave」が出題されることは珍しいが、こうして比喩的に用いる方法をマスターしておくと、特殊な単語でも使い勝手がよくなる。conclaveは、ニュースで話題になっている時に覚えてしまうと後々役に立つ、コスパも格調も高い英単語である。