open a can of wormsの直訳は「虫の缶を開ける」。もうこれだけで意味が推測できるが、「開けちゃいけないものを開ける」=「とんでもない混乱を引き起こす」みたいな意味だ。wormはミミズのような虫のこと。一方、いわゆる昆虫の類はinsectと使い分ける。小さい虫やばい菌のことはbugという。
昔、コンピュータがめちゃくちゃ大きかったころ、部品の間に蛾(moth)などが挟まってエラーが起きることがあった。小さい虫が部品に入りこんでエラーを起こすので、コンピューターの不具合がバグ(bug)と呼ばれるようになったことはよく知られている。
表題のイディオムの場合、wormはやはりバグと同じように「厄介なトラブル」のことを暗喩している。
open a can of wormsと似たような意味のイディオムとしてopen a Pandora’s box(パンドラの箱を開ける)という表現もすぐに思い浮かぶ。open a can of wormsとopen a Pandora’s boxはinterchangeable(置き換え可能)な関係に見えるが、それぞれのイディオムの歴史や格調の違いを考えれば、文脈によってうまく使い分けるのがエレガントだろう。
また、同じような意味を持つイディオムとしては、let sleeping dogs lie(寝ている犬はそのままにしておけ)もある。「寝た子を起こすな」の意味だ。let sleeping dogs lieと覚えるのが難しくても、don’t wake a sleeping dogなどと言い換えて覚えておけば、容易に実戦投入は可能だろう。無理にlet sleeping dogs lieという言葉を覚えて、いざという時に、let dog…なんちゃらだったよなあ、と悩むよりも、英語の世界では、缶に入ったミミズ(worms in a can)やパンドラの箱(Pandora’s box)、寝ている犬(a sleeping dog)がトラブルの象徴なんだと覚えておけば、あとは自分の言葉で話しても十分意味は通じる。
もし、let sleeping dogs lieという単語の並びは忘れてしまっても、面接か会話の中で、I don’t want to wake a sleeping dog.(私は寝た子を起こしたいとは思いません)などと言うことができればいい。シンプルイングリッシュのコツである。
open a can of wormsをツイッターで検索してみると、次のように使われている実例があった。
This must be corrected or fixed now or else it’s gonna open a can of worms in the near future!
(これは修正されないと。そうしないと近い将来、ミミズの缶を開けることになる!)
これは結構使えそうな例文だ。