Facebook(フェイスブック)が新しい社名を「Meta(メタ)」にすると発表した。Metaverse(メタバース)事業を見据え、SNSのイメージの払しょくを図った形だ。
Metaverse(メタバース)とは仮想空間に作られるもう一つの宇宙こと。実物の宇宙をUniverse(ユニバース)と呼ぶのに対して、Metaverse(メタバース)と呼ぶ。このMeta-という前置詞は「を超える」などという意味で使われることが多い。つまり、Metaverse(メタバース)は「現実の宇宙を超えた宇宙」とか「現実の宇宙とは別次元にある宇宙」みたいなイメージになる。
verse(バース)は「回る」という意味で、例えば、我々の住む銀河では、太陽系を含めてあらゆるものが共通の中心点の回りを調和的に回っている。一つの(Uni)点を中心に運命共同体のように回っている(verse)すべてをひっくるめて宇宙というわけである。ちなみに、verseは逆に回れば、re-verse(リバース)となる。北欧の自動車メーカー「Volvo(ボルボ)」の由来もverse(回る)の親せきだ。
閑話休題。Facebook改めMetaが描くMetaverse(メタバース)の未来では、自宅からモニターとにらめっこするリモート勤務ではなく、自分のアバターがメタバース上のオフィスに出勤し、そこで仕事をすることになる。すでにFortniteやMincraft、あつ森をはじめ、多くのオンラインゲームで自然と行われていた吏、一部の先端企業で実際に仕事に取り入れられたりしているが、これからいよいよ世界全体がメタバース上に展開していくであろうとMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)は見据えている。
ゲームという言葉を幼稚な意味だと勘違いしている向きはいまだ少なくないが、ある意味、「世界ゲーム化計画」とでもいえようか。Gamification of the Universe、ないし、Gamification of the Worldである。
表題に戻る。meta-という前置詞の意味はいろいろありすぎて難解だが、共通するイメージとしては、「何かと何かの間」と「変化」という二つを覚えておけばいいだろう。meta-はもともと、me-(間)という意味で、middle(中間)、mean(意味)とかmedia(媒体、メディア)という単語も生み出した。さらにそこから「変化」という意味が生じる。例えば、体内でさまざまなエネルギーを出す活動はmetabolism(メタボリズム、代謝)。何かを表すときに別のものに変えて説明する方法をmetaphor(メタファー、隠喩)という(phorは「運ぶ」の意味)。
ややこしいが、ネットや学問の世界でよく用いられるMetaの意味はまたちょっと違う。メタタグとか、メタファイルとか。これは昔、慣例的にphysics(物理)の後ろ(meta)に並べられていた学問(形而上学)を単純にその並びからmetaphysics(メタフィジックス=物理の後)と呼んだが、形而上学自体が物理を超越するような哲学を扱うことから、metaphysicsが「物理学を超える(meta)もの」と誤解されたのが始まりという。
現代では、「メタ」は「超越する」とか、「超える」とか、「高次元の」などと使われることが多い。mataはまさにさまざまな意味がこもった多義語の典型例で、さまざまな可能性に挑戦していくフェイスブックの新しい社名に相応しいと考えられたのだろう。