Maritozzo(マリトッツォ)というお菓子が人気である。語源マニアとしては、mari (マリ)という響きを聞き、結婚に関係があるお菓子ではないかと思いを巡らす。maritoはイタリア語で夫の意味という。
The Roman Foodie.comのThe Roman Maritozzo: A “Sweet” Roman Traditionによると、次の通り。
It wasn’t until the 1800s that the “loaves” were given their current name, maritozzo which is derived from the Italian word for husband, “marito.”
ここで野生の not until を補足。it wasn’t until the 1800s that 〜で、「1800年代になって初めて〜」と訳すことになる。この文の場合、「そのパンは1800年代になって初めて、夫(marito)を意味するイタリア語に由来するマリトッツォ(maritozzo)という今の名前が付けられた」となる。
It wasn’t until that moment I realized 〜(その時になって初めて〜だと分かった)という言い方もよく使われる。こちらは面接や作文に便利な表現。
閑話休題。maritozzoは1800年代を境に変化を遂げたことになる。それ以前はDating back to Roman times, the “loaf” that the modern day maritozzo derives from began as a nutritional necessity made of flour, eggs, honey, butter and salt. These loaves were substantially larger than the maritozzo of today.とあるように、もともとはローマ時代、小麦粉、たまご、ハチミツ、バター、塩で作られた栄養価の高いパンで、今のマリトッツォよりも大きかった。
中世。4月ごろの復活祭(イースター)前の約40日間を四旬節(しじゅんせつ、the Lent)といい、断食や食事の節制が求められるが、質素で栄養価の高いこのパンは労働者の必需品であり、教会公認の食事とされていた。
1800年代になると、新しい伝統が加わり、maritozzoと呼ばれるようになる。The tradition was that a girl’s fiancé would give his bride-to-be a maritozzo the first Friday of March. This Valentine’s-Day-equivalent pastry usually had two pierced hearts on top drawn with sugar. Inside frequently concealed a gift of either a ring or a small gold object. つまり、女性が男性にチョコを贈るバレンタインのように、男性から婚約者の女性(bride-to-be)にこのパンを贈る習わしが流行した。maritozzoの中に指輪や金の小物を入れる慣習もこの時代から作られていったようだ。
マリトッツォは、断食のシーズンに入る前に、夫となる男が婚約者の女性に”甲斐性”を表すお菓子だったと考えると面白い。マリトッツォ(夫)という語源の意味も納得できる。
現代になっても、The maritozzo is still a staple in Rome、マリトッツォは今もローマのa staple(生活必需品、特産品)という。