後輩が大きなミスをし、ひどく落ち込んでいた。とにかく理不尽な怒り方をする上司に徹底的に絞られた。人を傷つけるのは、ものの言い方だ。
僕もそういう上司にあたったことがある。
立て続けに大きなミスをして大目玉を食らった。
「わが社始まって以来のとんでもないミス」と言われ、社内のホウボウから「トンデモナイことをしてくれた」と電話がかかってきた。
まあ、それでも何年か経って今ではなんとか笑い話になった。
当時怒った人たちも、今ではいい上司だと思える。
根っこは本当にいい人ばかりだ。英語では、Their hearts are in the right place. (*126,000hit)といったところ。*Google検索
ミスはミスだったから、叱られて当然だった。
それも確かに大きなミスだった。
ミスをしても誰にも叱られない会社は、それはそれで不幸だ。
僕はそのミス以来、いい意味で慎重に仕事をするようになれた。
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まあ、でも落ち込むときは落ち込むよね。
他人に励まされても、なかなか元の生活には戻れないものだ。
僕は割りと神経が太いほうなので何を言われても気にしないようにしていたが、ミスした直後はそれでも少し落ち込んでいた。
そんなとき本屋でKevin D.Wang という人の「Don’t Kill a Cock(ニワトリを殺すな)」という本を見つけた。
メメしいのであまり言いたくないが、この本で少し救われたっけ。
結構売れた本らしく、知ってる人がいるかもしれないが説明する。
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この本の主人公はデビットという中堅サラリーマン。ある小さな会社に出向を命じられる。出世コースを外れたと落胆するが、出向した先には自分のあらゆる常識をくつがえす会社理念が待っていた。
そのうちの一つが会議室のドアに張られた「ニワトリを殺すな」という張り紙。デビットは初めは怪しい会社だといぶかしがるが、社長のジェームスの言葉に触れるうちに開眼していく。
デビットはこの出向によって人生の転機を迎え、数年後には「世界で尊敬される会社」の社長として喝采を浴びることになる・・。
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ニワトリは群れのなかに一羽傷ついたニワトリがいると、他のニワトリが寄ってたかってその傷口を突付き、最後には殺してしまうという。
他人のミスをあげつらうばかりで、ミスをした人間をダメにしてしまう会議をニワトリ会議というらしい。それで「ニワトリを殺すな」というわけだ。
失敗した人間を責めるのだけでなく、なぜそのミスが起きてしまったかをみんなで考え、その問題を解決できるような会社がいい会社だという。
失敗なんて、明日はわが身だ。
ニワトリの群れのなかにいたら、明日は自分が突付かれて殺されてしまうかもしれない。
僕はこの本を読んで、自分の会社は絶対にニワトリ会社にしてはいけないな、と思った。
あとで分かったのだが、ジェームス社長は本田宗一郎がモデルという。実際に本田宗一郎の名言が散りばめられていて、若い人には一度読んでもらいたい本と言える。
例えばジェームスは赴任したばかりで戸惑っているデビットにこう言う。
「若いうちの失敗なんてたいしたことない。それで会社がつぶれるなんてことはまずないよ」
そしてこうも言う。
「『俺は色々失敗もしたが、だけど、こんな大きな仕事もした』と誇れるような生き方をみんなにしてもらいたい。これこそ充実した人生の過ごし方じゃないかな」
◇
自分は将来、絶対にニワトリ上司にならないようにしようと誓った。
そして、今は落ち込んでいる後輩も、将来は決してニワトリ上司にはならないだろう。