English Memorandum

【一読で覚える英語(20)】be slated forは運命のスレートに刻まれている

「be slated for」という表現には一見不思議な響きがあるが、その語源に遡ると、実に興味深い背景が見えてくる。「slate(スレート)」とは、建築材料としても知られる「粘板岩」のことであり、このスレートに由来するのが今回の「be slated for」という表現である。

19世紀のイギリスでは、学校の授業や会議などの予定がスレート板にチョークで書き込まれていた。紙が貴重であった時代、再利用可能なスレートは予定表や記録媒体として重宝された。このように、未来の出来事を「スレートに書き込む」ことが、「予定されている」「…することになっている」という意味につながっていったのである。つまり「be slated for」は文字通り、「粘板岩に刻まれた予定」のように、ある事柄が未来に確実に起こるよう記されている、というニュアンスを含んでいる。

この表現の魅力は、「予定されている」という平易な意味の中に、「既に書き込まれている=もう変更が難しいほどに決まっている」という強い予定のイメージが含まれている点にある。たとえば、“The company is slated for a major restructuring.”(その会社は大規模な再編成が予定されている)という文では、ただの計画ではなく、もう決定事項として受け止めるべき事柄であるという印象を与える。

似たような表現に「be scheduled to」や「be due to」などがあるが、これらはやや形式的で中立的な響きを持つ。「be slated for」には、特にアメリカ英語において、メディア発表や公式な場面で使われることが多く、その分だけニュース的、発表的な雰囲気を漂わせる点でも独特である。

また、「slate」には批評する、非難するという別の意味もあり、例えば「The film was slated by critics.」(その映画は批評家に酷評された)のように使われるが、これは「スレートに書かれたように評価が定まっている=動かしがたい評価を受けた」という語源的な連関も感じられる。

いずれにせよ、「be slated for」は、何かが運命づけられているかのような、予定がすでに書き記された運命の板書を感じさせる表現であり、その語源を知ることで、ただの「予定」の一言に深みと確かさが加わるのだ。

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